『英国王のスピーチ』は実話?ジョージ6世の吃音、妻の支え、エリザベス女王との関係まで解説

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イギリス王室、英国の歴史、美しい英国英語に惹かれる人なら、『英国王のスピーチ』は一度は観ておきたい映画です。

この作品は、後に英国王ジョージ6世となるヨーク公アルバートが、吃音と向き合いながら、自分の声を取り戻していく実話をもとにしています。

王室、宮殿、ラジオ放送、第二次世界大戦前夜のイギリス。画面には、イギリス好きにはたまらない重厚な雰囲気があります。

けれども、この映画が本当に心に残る理由は、単なる英国王室映画だからではありません。

中心にあるのは、人前で話すことへの恐怖です。

英語を学んでいると、発音を直されるのが怖い、人前で話すと声が震える、頭では分かっているのに言葉が出てこない、という経験をすることがあります。

私自身も、英語や発音に自信を失った経験があるので、ジョージ6世がスピーチ原稿に細かく注意を書き込み、必死に言葉を出そうとする姿には強く共感しました。

『英国王のスピーチ』は、イギリス好きの人には英国王室と歴史を味わえる映画であり、英語学習者には「完璧に話せなくても、声は届く」と思わせてくれる映画です。

この記事では、『英国王のスピーチ』のあらすじ、実話との違い、ジョージ6世の吃音の背景、妻エリザベスの支え、そして英語学習者として心に残ったポイントを紹介します。

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『英国王のスピーチ』の簡単なあらすじ

主人公は、後に英国王ジョージ6世となるヨーク公アルバート、愛称バーティです。

彼は英国王ジョージ5世の次男として生まれましたが、幼い頃から吃音に悩まされていました。人前で話すことが苦手で、公式の場でスピーチをするたびに強い恐怖と屈辱を味わいます。

映画の冒頭で描かれるのが、1925年のウェンブリー・スタジアムでのスピーチです。これは英国博覧会の閉会式での演説で、彼にとっても聴衆にとっても非常につらい時間だったとされています。

その後、有名なスピーチセラピストを訪ねますが、喉をリラックスさせるためにたくさんタバコを吸うように言われたり、口の中にたくさんのビー玉を入れて練習するように言われたりしてしまいます。

そんな彼を支えたのが、妻エリザベスです。彼女は夫を助けるため、オーストラリア出身の言語療法士ライオネル・ローグを訪ねます。

最初、バーティはローグの型破りなやり方に反発します。しかし、何度もぶつかり合いながら、二人は少しずつ信頼関係を築いていきます。

1925年の実際のスピーチは映像はあっても音声は消されていて聞くことはできませんでした。


『英国王のスピーチ』は実話なのか

『英国王のスピーチ』は、実在した英国王ジョージ6世と、言語療法士ライオネル・ローグの関係をもとにした映画です。

ただし、映画なので時系列や人物関係には脚色があります。特に重要なのは、映画ではローグとの出会いがジョージ6世の即位に近い時期のように見えますが、実際には1926年に治療が始まっていたことです。1925年のウェンブリー演説の失敗後、彼はローグの助けを求めるようになりました。

ローグは医師ではありませんでしたが、発声、呼吸、緊張、身体の使い方に注目しながら、ジョージ6世のスピーチを支えました。彼の治療は、単に「発音を直す」というよりも、声を出す人間そのものを支えるようなものだったように感じます。


私も「英語の発音指導」を受けたことがありますが、指導する先生方から私は彼ら彼女らのようには話せるようにはならないと言われました。非常に悲しかったです。

完璧になれないとしても、学習者のよくなろうとするメンタルを支えてくれる指導者に出会うのは非常に難しいことだと実感しています。

ジョージ6世の吃音の背景

ジョージ6世の吃音には、幼少期の環境や心身への強いプレッシャーが関係していたと考えられています。

彼はもともと左利きでしたが、当時の習慣により右手を使うよう矯正されました。また、X脚のために痛みを伴う矯正器具をつけさせられていたことも知られています。

さらに、幼少期には乳母から十分な世話を受けられなかった、厳格な父ジョージ5世への恐怖があった、という話も伝えられています。

もちろん、吃音の原因を一つに決めつけることはできません。けれども映画を観ていると、彼の吃音は単なる発声の問題ではなく、長年積み重なった不安、恐怖、自己否定感と深く結びついていたように見えます。

だからこそ、ライオネル・ローグの役割は大きかったのだと思います。彼は王を特別扱いするのではなく、一人の人間として向き合いました。


兄エドワード8世の退位と、突然王になったジョージ6世

もともと王位を継ぐはずだったのは、ジョージ6世の兄エドワード8世でした。

しかしエドワード8世は、アメリカ人女性ウォリス・シンプソンとの結婚を望みます。彼女は離婚歴があり、当時の英国王室や政府にとって、その結婚は大きな問題でした。

この話はGOLDEN GLOBE®を受賞した映画「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」やドラマ「ザ・クラウン」で観ることができます。

結果としてエドワード8世は退位し、弟のアルバートがジョージ6世として王位に就くことになります。

人前で話すことに強い恐怖を抱いていた人物が、突然「国の声」にならなければならなかった。ここに、この映画の大きな悲劇性があります。

彼は王になりたかった人ではありません。むしろ、自分には向いていないと思っていた人です。けれども、逃げることができなくなった。

この部分が、映画をただの王室ドラマではなく、非常に人間的な物語にしています。

幼い頃、バーディーの吃音をからかっていたエドワード8世は華やかで器用なタイプで非常に人気がありました。スピーチも難なくこなしてしまいます。

その引け目からもジョージ6世は国民が望んでいるのは彼で私ではないと大きく自信をなくしてしまいます。


ジョージ6世の心からの戴冠式演説と行列、1937年 [HD]。

ジョージ6世の戴冠式は1937年5月12日に行われました。これは、兄エドワードの戴冠式が予定されていたのと同じ日でした。ジョージは国王になることに乗り気ではありませんでした。吃音のため、人前で話すことに非常に抵抗がありました。この映像からも、彼が話すのに時間をかけているのが分かります。https://www.youtube.com/watch?v=m-vlrXBqGw8

妻エリザベス、後のクイーンマザーの支え

映画の中で、ジョージ6世を静かに支え続ける妻エリザベスの存在はとても印象的です。

彼女は後に「クイーンマザー」と呼ばれる人物で、現在の英国王室の歴史を理解するうえでも重要な存在です。

興味深いのは、彼女が最初から王室生活を望んでいたわけではなかったことです。ジョージ6世、当時のアルバート王子は彼女に複数回プロポーズしましたが、彼女は王室に入ることで自由を失うことを恐れ、最初の申し出を断ったとされています。最終的に3度目のプロポーズを受け入れ、1923年に婚約が発表されました。

映画の中のエリザベスは、夫を無理に変えようとはしません。彼の弱さを知りながら、必要な時にそっと背中を押します。

ジョージ6世にとって、彼女は単なる王妃ではなく、自分が崩れそうになる時に支えてくれる心の支柱だったのだと思います。


『ザ・クラウン』とのつながり

ザ・クラウン』を観た人にとっても、『英国王のスピーチ』は非常に興味深い作品です。

『ザ・クラウン』の序盤では、エリザベス王女が若くして父ジョージ6世を亡くし、急遽女王になる姿が描かれます。

その「病弱な父王」が、『英国王のスピーチ』の主人公ジョージ6世です。

『英国王のスピーチ』を観た後で『ザ・クラウン』を見ると、エリザベス2世がどれほど大きな喪失と責任を背負って王位についたのかが、より深く感じられます。

ジョージ6世は長く王になるために育てられた人ではありませんでした。そして娘のエリザベスもまた、若くして突然、大きな役割を引き受けることになります。

親子二代にわたる「望んだわけではない責任」という視点で見ると、英国王室の物語がさらに立体的に見えてきます。


英語学習者にも響く理由

この映画は、英語学習者にもおすすめです。

理由は、単にイギリス英語が聞けるからではありません。

もちろん、コリン・ファースの発音や、王室・政治家たちの英語はとても美しく、英国英語に興味がある人には魅力的です。しかしそれ以上に、この映画は「声を出すことの怖さ」を描いています。

発音を直される。
人前で読まされる。
間違えたらどうしようと思う。
原稿に注意点を書き込みすぎて、逆に緊張する。
頭では分かっているのに、口が動かない。

語学学習をしている人なら、こういう感覚に覚えがあるかもしれません。

ジョージ6世のスピーチ原稿には、どこで止まるか、どこを強調するか、どのように呼吸するか、細かい注意が書き込まれていました。その姿は、発音テストやスピーチ練習に向き合う学習者の姿にも重なります。

だからこの映画は、王様の映画でありながら、英語学習者や緊張しやすい人にとっても、とても身近な作品なのです。


イギリス英語発音教本

上の本がおすすめです。

イギリス英語の発音の書籍を数多く執筆されている小川直樹先生。
一度レッスンを受講させてもらったことがありますが、惚れ惚れする美しいイギリス英語を話されます。

非常にわかりやすい言葉と動作で直感的にわかる指導をしてくださいます。またクイーンイングリッシュだけでなくスコットランド、北アイルランド、各地の方言などにも精通されていて、アメリカ英語の成り立ちまで教えてくださいました。素晴らしい先生です。

1939年のスピーチが感動的な理由

映画のクライマックスで描かれるのは、1939年9月3日、英国がドイツに宣戦布告した直後のラジオ演説です。

この時、ジョージ6世は英国本土だけでなく、帝国・連邦の人々に向けて語りかけました。

完璧な話し方だったから感動的なのではありません。

むしろ、彼がどれほどの恐怖と緊張を抱えていたかを知っているからこそ、その声が重く響きます。

彼は生まれつき堂々とした演説家だったわけではありません。人前で話すことを恐れ、失敗し、傷つき、それでも逃げずに練習を重ねた人です。

だからこそ、彼のスピーチには「完璧な発音」以上の力があります。

それは、自分の弱さを抱えたまま、それでも役割を果たそうとする人の声です。


音声のみ – 第二次世界大戦勃発に関するジョージ6世国王の演説。国王は平和を模索してきたものの、戦争が始まってしまった今、我々が大切にしているすべてのものを守るために戦わなければならないと語ります。そして、国内外の国民に対し、この試練の時において冷静かつ毅然とした態度で団結するよう呼びかけます。 放送は国歌で締めくくられます。https://www.youtube.com/watch?v=NbJ8QfDqrN8

実際の音声は世界中のイギリス連邦の人々に届きました。

『英国王のスピーチ』のキャスト

主なキャストは以下の通りです。

役名俳優
ジョージ6世/バーティコリン・ファース
ライオネル・ローグジェフリー・ラッシュ
エリザベス妃/後のクイーンマザーヘレナ・ボナム=カーター
エドワード8世ガイ・ピアース
ジョージ5世マイケル・ガンボン
ウィンストン・チャーチルティモシー・スポール

この映画は第83回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞を受賞しました。コリン・ファースの演技は特に高く評価されています。


『英国王のスピーチ』はどこで見られる?

2026年5月時点で、JustWatchでは『英国王のスピーチ』はU-NEXTとPlus GAGA Amazon Channelで配信中、Apple TV StoreやFODでレンタル可能とされています。

ただし、映画の配信状況は頻繁に変わります。記事に書く場合は、次のようにしておくと安全です。

配信状況は変更されることがあります。視聴前にAmazon Prime Video、U-NEXT、Hulu、Netflixなど各サービスで最新情報を確認してください。


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まとめ:弱さを抱えたまま、それでも声を届ける物語

『英国王のスピーチ』は、吃音を克服した王の成功物語として見ることもできます。

けれども、私にはそれ以上に、「弱さを完全に消せなくても、人は自分の声を届けることができる」という映画に見えました。

ジョージ6世は、最初から強い人だったわけではありません。むしろ、緊張しやすく、自信がなく、人前で話すことに深い恐怖を抱えていました。

それでも彼は逃げませんでした。

妻エリザベスに支えられ、ライオネル・ローグとぶつかりながら信頼関係を築き、少しずつ自分の声を取り戻していきます。

英語を学ぶ人、発音に悩む人、人前で話すのが苦手な人、過去の失敗が忘れられない人にとって、この映画はただの歴史映画ではありません。

「完璧でなくても、声は届く」

そう思わせてくれる作品です。

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